その後のHermes追跡(2)、三層構造と3つのAPIモードが見えてきた

GitHubのスター数が95.6K。NousResearchのAIエージェント「Hermes Agent」は、2026年4月時点でこの数字まで伸ばしています[6]。前回の記事では、設計文書を「生きた文書」として更新し続ける仕組み[4]と、70超のツールを取り上げました。今回はその後の追跡として、公開されたアーキテクチャ文書[1][2]をもとに、ツールの数の先にある「繋ぎ方」の設計を掘り下げます。

文書が示すのは、大きく三層の構造です[2]。いちばん上は、利用者が触れる入り口の層です。CLI(コマンドラインでの操作)、メッセージングゲートウェイ(チャットアプリ経由の窓口)、ターミナルTUI(文字だけで描く画面)、Webダッシュボードが並びます[2]。公式の構成図には、さらにバッチ実行ランナー、APIサーバー、Pythonライブラリとしての利用も描かれています[1]。同じエージェントを、対話でも自動処理でも、プログラムの一部としても動かせるわけです。入り口は複数でも、先はひとつ。すべてが中央の核に合流する構造になっています[2]。

中央の核が、AIAgentというクラス(処理をひとまとめにした単位)です[2]。推論の流れである会話ループ、記憶の保存、ツールへの指示出しを、ここが一括で管理します[2]。記憶の管理は専任の部品が担い、会話をまたいだ情報の保持を支えます[2]。目を引くのは、プロンプト(指示文)の構築と「圧縮・キャッシュ」を専用部品として持つ点です[1]。会話が長くなると文脈は膨らみます。それを圧縮しながら保つ仕組みが、最初から組み込まれているようです。本体とは別に、補助的なLLM呼び出しを管理する点も特徴です[2]。

もうひとつの鍵が、プロバイダ解決です。これは、どのAPI形式と繋ぐかを決める仕組みです[1]。Hermesは3つのAPIモード、chat_completions、codex_responses、anthropicに対応しています[1]。chat_completionsはOpenAI互換の広く使われる形式で、anthropicはAnthropic社のAPI形式です。つまり、異なる形式のAPIをひとつのエージェントの中で切り替えられるのです。モデルの組み合わせを変えた運用がしやすくなると考えられます。

いちばん下は、実行の層です。ツールレジストリ(ツールの目録)には70超のツールが登録され、28のツールセットに整理されています[1]。前回「70超」とお伝えした数の内訳が、ここで見えてきました。扱える範囲はターミナル操作、ブラウザ自動化、画像認識など多岐にわたります[2]。実行環境も複数から選べます。ローカルのほか、Docker(コンテナと呼ばれる独立した実行環境)、SSH(遠隔マシンへの接続)、サンドボックス(隔離された安全な実行場)です[2]。ツールは隔離された環境で動くため、システムへの影響を抑える配慮もうかがえます[2]。セッション(やり取りのつながり)の状態はSQLiteというデータベースに保存され、あとから再開できるようになっています[2]。

この三層分離には、実用上の意味があります。入り口と核と実行が分かれていれば、一部の変更が他へ波及しにくくなります。たとえば実行環境をローカルからDockerへ変えても、核の部分はそのまま動く作りです[2]。長く使い続ける前提の設計だと言えそうです。

しかし、実力の検証はまだ手探りのようです。「ClaudeやChatGPTに勝つか」と題したレビューが登場していますが[3]、今回の素材からは実際のテスト結果や比較の数値は見つかりませんでした。タイトルが問いの形なのは、結論がまだ定まっていないことの表れかもしれません。使い込むほど育つエージェントをうたう解説[7]や、自己学習を強調するレビュー[5]は増えています。とはいえ、その効果を数値で示した材料は乏しいのが実情です。

三層の構造、複数の入り口、切り替え可能な3つのAPIモード。Hermes Agentの人気は、ツールの数だけでなく、こうした接続の設計に支えられているようです。95.6Kというスターズの人気が、実運用での評価にどこまで結びつくか。設計文書が更新され続けるかぎり、この追跡も続きそうです。

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