
AIに「財布」を預ける時代が、一歩だけ現実に近づきました。Metaの個人AIエージェント「Muse」は、9月8日の発表からわずか2週間で、姿と声と買い物の力を手に入れています。9月23日のイベントでは、動画で会話できるアバターや専用のメールアドレス、手のひらサイズの専用端末まで、新情報が一気に公開されました[2]。
Museは、チャットで頼んだ作業を代わりに進めてくれるエージェントです。米国でiOS、Android、Web向けに公開されました[2]。名前やアバター、話し方を自分好みに設定でき、作業中のブラウザをユーザーが見守れる点も特徴です[2]。技術的な経験がなくても、そのまま使い始められることを目指したと公式は説明します[1]。開発を率いるのはAlexandr Wang氏です。Metaは2025年6月、Scale AIの株式49%を約143億ドルで取得し、同氏を初の最高AI責任者に据えました[2]。そのもとで2026年4月に公開されたモデル「Muse Spark」が、エージェントの頭脳になります[2]。
23日のイベントで目を引いたのは、Realtime Avatarという新モデルです。エージェントの姿を画面に映したまま、ビデオ会話ができるようになりました。macOSでは、アプリをエージェントが直接操作できます。さらに、エージェント専用のメールアドレスも付与されます。メールを転送したり、スレッドに宛先を加えたりして、Museへ仕事を回せる仕組みです[2]。日常の流れにAIの仕事を組み込む工夫と言えそうです。スマートグラスからは、呼びかけの言葉でMuseを利用できます[2]。スマートフォンが手元になくても使える、手のひらサイズの端末「Muse Charm」もお披露目となりました[2]。
そして本題は、買い物代行です。MuseはStripeが手がける決済サービス「Link」に対応しました。AIエージェントとして初めて、Linkの購入保護の対象になっています[1]。破損や紛失の補償、値下がり時の差額、手数料なしの返品、返品保証が、対象商品で無料で付きます。支払いの安全策も具体的です。Linkのエージェント用ウォレットは、一度きりで使えるカード番号をその都度発行します。本物のカード情報を隠したまま、ネット上で購入を完了できる仕組みです[1]。今後はShop Payでの支払いや、1Passwordとの連携も予定されています[1]。
提携企業は11社に上ります。Walmart、Best Buy、Sephora、Gap、Wayfair、Expedia、Instacartに加え、Shopify、GitHub、Notionまで名を連ねました[2]。日常の買い物から旅行の手配、開発業務まで、守備範囲はかなり広いようです。料金は無料枠のほか、月20ドルと月100ドルのプランが用意されています[2]。
しかし、機能の豊富さだけでは、この勝負は決まりません。WIREDは「Museにはあなたの信頼が必要だ」という趣旨の見出しで、同エージェントを取り上げています[6]。目標を伝えると、Museは計画を作り、時間と資源を調整し、あとは自ら進めます[1]。頼めばブラウザを開き、フォームを埋め、交渉までこなします[1]。車を少し高く売り、請求額を下げる——アプリを閉じても作業は続き、変化があれば戻ってきます[1]。メール送信や購入の前には、いったん承認を求める設計です[1]。それでも、生活の根幹をAIに任せる心理的なハードルは高く、すでに複数のレビュー記事が安全性と料金の見合いを検証し始めています[3][4][4]。
広告は載せない方針で、Zuckerberg氏は取引から少額の手数料を得て利益を出す考えを示しています[2]。つまりMetaの収益は、Museが実際にどれだけ買い物や手続きを任されるかに直結します。専用端末も購入保護も、その信頼を形にするための準備と言えるでしょう。エージェント時代の勝負所は、性能の数字よりも「財布を預けてもらえるか」にありそうです。








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