続・Dots追跡:dots.ocrがdots.mocrへ、図表をSVGコードに

142Bの大型モデルの次の一手は、文書解析でした。前回の追跡でそうお伝えした「Dots」のAIモデルdots.ocrに、新しい動きが出ています。2026年3月19日、開発元は最新版dots.ocr-1.5を「dots.mocr」へ改名すると発表しました。技術詳細をまとめた論文も公開されています。重みはHugging Faceでdots.mocrとdots.mocr-svgの2種類です[1]。小型モデルがどこまで伸びるのか、その後を追いました。

まず時系列を整理します。dots.ocrは2025年7月30日、1.7BのLLMを基盤にした多言語文書解析モデルとして公開されました。公開時から最高水準(SOTA)の性能を掲げています[1][2]。続く10月31日には、OCR(文字認識)に絞った基盤VLM「dots.ocr.base」が登場しました。VLMは画像と言語をひとつのモデルで扱うAIです。dots.ocr.baseはdots.ocrの基盤モデルでもあります[1]。そして2026年3月、1.5がdots.mocrへ改名されています[1]。半年あまりで三段階の進化です。

dots.mocrの特徴は、扱う対象の広さです。誰もが使えることを目指した設計で、ほぼすべての人間の文字体系を認識できます。同サイズのモデルの中では、多言語文書解析でSOTAと説明されています[1]。特に目新しいのが、グラフや図解をSVGコードへ直接変換する能力です。SVGは図形をコードで記述する形式で、コードにすれば編集や再利用がしやすくなります。図を画像のまま切り出すのではなく、意味ごとにコードへ起こす点が新しいところです。Web画面の解析や、写真の中の文字を拾う処理にも対応しました[1]。

土台のdots.ocrの設計も確認しておきます。レイアウト検出と内容認識をひとつのVLMに統合し、読む順序も崩さないのが持ち味です[2][3]。タスクの切り替えは、入力プロンプトを変えるだけで済みます。複数モデルをつなぐパイプラインが不要になり、構成がシンプルになります[2]。従来はDocLayout-YOLOのような専用検出モデルが担っていた領域でも、VLMで十分競争力のある検出ができると開発元は説明しています[2]。1.7Bという小型さは、推論速度の速さにもつながっています[2]。

性能面の数字も具体的です。文書解析ベンチマークOmniDocBenchでは、テキスト・表・読み順の各項目でSOTAを達成しました。数式認識はDoubao-1.5やgemini2.5-proといった、はるかに大きなモデルに匹敵する結果です[2]。低リソース言語――学習データの少ない言語――の検証には、100言語・1493枚のPDF画像からなる社内ベンチマークが使われました[2]。レイアウト検出と内容認識の両方で、決定的な優位を示したとしています[2]。画像はdpi 200まで解像度を引き上げる前処理を経ています[2]。

SVG生成の評価も見てみましょう。UniSVGというデータセットのISVGEN指標で、出力コードの描画結果と元画像を比べます[1]。モデル同士を対戦形式で数値化するEloスコアの評価には、Gemini 3 Flashが使われました。ocrarenaの結果とも整合したと報告されています[1]。pdf-parse-benchの数値は、Qwen3-VL-235B-A22B-Instructによる再現結果です[1]。

ただし、数字の読み方には注意も要ります。OmniDocBench1.5の数式と表の指標は省略されています。検出や対応づけのプロトコルに結果が左右されすぎるためです[1]。比較相手のGemini 3 Pro、PaddleOCR-VL-1.5、GLM-OCRの数値はAPI経由です[1]。olmocrやMonkeyOCRの公開値、開発元の内部評価に由来する指標も混ざります[1][2]。興味深いのは、HuanyuanOCRの数値だけがローカル推論による実測という点です[1]。結果のmarkdownからはページのヘッダー・フッターを除くなど、集計条件も細かく決められています[1][2]。なお前回追跡したdots.llm1も、公式リポジトリ[3]の性能ベンチマークがDeepWikiで解説されており[5][3]、大型モデル側の情報も追いやすくなりました。

グラフや化学式、ロゴといった視覚言語には、人間の知識がぎっしり詰まっています。dots.mocrはそれらをSVGコードとして統一的に読み解く方向へ進んでいます[1]。文書解析にとどまらない狙いが見えてきます。1.7B級で動く軽さは、ローカルでAIを試す環境とも相性がよいはずです。評価条件が細かく明示されている点は、数字を比べる側にとっても有用です。次に注目したいのは、SVG生成が実務でどこまで使われるか。Dots追跡は続きます。

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