
リビングのゲーム機が、家族全員のAIサーバーに変わる——そんな試みがHacker Newsで375ポイント、89件のコメントを集めています[1]。注目は「PS5LM」というオープンソースプロジェクトです。脱獄(ジェイルブレイク、メーカーの制限を解除して独自ソフトを動かすこと)したPlayStation 5に、ローカルでLLMを動かす定番エンジンのllama.cppを移植しました。本体のGPUで、GGUF形式(llama.cpp向けのモデルファイル形式)のモデルをネイティブに動かします[1][2]。
PS5自身がモデルを実行し、LAN上のPCやスマホ、コーディングツールがそれを使う構成です[2]。動作中に別のPCは不要で、クラウドもアカウントも使いません[2]。技術的な中身は、llama.cppのVulkanバックエンドをPS5のGPU(RDNA 2)で動かす形です。VulkanはGPUを直接扱うAPIです。モデルとコンテキスト(一度に扱える文章の範囲)には、本体の共有メモリ11.4GBを割り当てます[2]。llama.cppが対応するモデル構造と量子化(重みを圧縮してメモリを節約する仕組み)は、そのまま持ち込めます[2]。モデルを置くと、空きメモリに収まる最長のコンテキストと最適なキャッシュを自動で選ぶ機能もあります[2]。
出来上がるのは自宅LAN向けのモデルサーバーです。OpenAI互換とAnthropic互換のAPIを公開します。コーディングツールのClaude Codeも、そのまま接続できます[2]。クライアント側は本体のアドレスを指定するだけで、モデル名は何を入れても読み込み済みのモデルが答えます[2]。TV向けのチャット画面では、どの機器が何を尋ね、どう答えているかがリアルタイムで流れます。□ボタンでデモ送信、△ボタンでキーボード表示と、ソファからでも試せます[2]。温度や電力、GPUとCPUの負荷を2分〜1時間のグラフで監視できる画面も付きます[2]。
速度の実測値も公開されています。PS5 Slimでの計測では、Qwen 3.5 0.8BをQ4_K_Mという型で圧縮した場合、毎秒約207トークン出ました[4]。9Bモデルでは毎秒55トークンです。27Bはさらに強く圧縮し、64kコンテキスト付きで毎秒約20トークンでした[4]。トークンはAIが扱う単語の断片単位です。9Bモデルがラップトップからのリクエストに答えるデモ動画も公開されています[2]。
決定特化モデルへの対応も特徴です。d1やClef、OpenJevといったモデルをGPUで動かします。これらは選択や採点、二択の質問に確率付きで一瞬で答えるタイプです。PC向けサービスOllayaと同じAPIで応答します[2]。一方、セットアップには条件があります。ファームウェア7.00〜13.60の脱獄済みPS5に、etaHENやkstuff-liteといったhomebrew(独自製作ソフト)を導入する必要があります[4]。
しかし、PS5がその用途に向くかについては意見が割れています。daily.devのコミュニティ(58コメント)では、PS5のハードからの推論に技術的関心が集まる一方、優劣をめぐる議論が長く続きました。比較対象に挙がったのはミニPCと、マイニング向けボードのBC-250です[4]。さらに、脱獄プロジェクトはSonyの削除でGitHubから消えるおそれがあるという指摘もありました[4]。実際、同名のミラーリポジトリはすでに複数見つかります[5]。
Hacker Newsのコメント欄も盛り上がりました。「GPUを持たない環境なら、11.4GBの共有メモリで面白いことができそうだ」という声があります[3]。PS3をクラスタ化して計算に使った過去の事例へのリンクを示す人もいました。「これのBeowulfクラスタを想像できるか」という、複数台を束ねる構成を持ち出す定番ジョークも登場しています。「近いうちに、とんでもなくランダムな機器がモデルをホストするのを見ることになるだろう」という感想もありました。「自己複製モデルがPS5を乗っ取り始めるのも時間の問題だ」といった冗談まで飛び出しています。
この試みが示すのは、llama.cppの移植性の高さです。PS5のGPUと11.4GBの共有メモリでも、9Bモデルが毎秒55トークンで動く現実味がありました[2][4]。公式サイトや解説記事もすでに複数出ています[5][7][8]。脱獄という条件と削除リスクは残るものの、家電をAIサーバーに変える発想は、これからもさまざまな機器に広がっていくかもしれません。









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